用語集


カニゼン

カニゼンとは、無電解ニッケルめっきの総称でもあり、当社の社名でもある「カニゼンめっき」(Kanigen®)は、C(K)atalytic(触媒) Nickel(ニッケル) Generation(生成) の頭文字をとり、Kanigen と命名されました。カニゼンめっきとは、電気を使わずに化学反応によってニッケル燐合金をコーティングすることです。
カニゼンめっきは、他のメッキと比較して、

  1. めっき膜厚が均一である
  2. 不導体へのめっきが可能である
  3. 幅広い金属へのめっきが可能である
  4. 密着性・硬度・磨耗性・耐食性に優れている

等の特性があります。
その特性から、工業部品の機能を強化する機能めっきとして、自動車や半導体部品、デジカメやパソコンといった身近なものからF1マシン、ジェット機、人工衛星に至るまで幅広い分野で当社の技術が活きています。当社の社名でもあるカニゼンが、無電解めっきの総称「カニゼンめっき」と言われるのもその証です。


シューマー

日本カニゼン㈱が、無電解ニッケルめっきを手軽に何処でもめっきできるように開発しためっき液の総称です。
Surface metalizerの頭文字から『Sumer』=『シューマー』と 命名し販売を始めました。


建浴

めっき液を規定の比率で調合し、各成分の濃度やpHを調整し、めっきできる状態にすることです。もちろん、めっき液だけでなく、前処理液を調合する場合でも、『建浴』という言葉を使います。
建浴方法にもいろいろなケースがあり、ブルーシューマーの様に1液で建浴するもの、SE-666の様に2液あるいはそれ以上で建浴するものもあります。(取扱説明書に標準的な建浴方法を記しています。)
シューマー液の場合、各成分の濃度やpHなど全て弊社の製造工場で調製、分析して出荷しておりますので、建浴時にお客様のラインで細かな調整や、分析を必要としません。(一部例外もあります。)


ターンオーバー(ターン)

Metal Turnoverの略語です。(ちなみに中国語では、『周期』という言葉を使います。)
連続タイプのめっき液で、液の老化具合を知るための数値として用いられます。建浴時に浴中に含まれるニッケルを(理論的に)全て使用した時点を「1ターン」とします。
ブルーシューマーの様なワンバッチ液の場合は、現在のニッケル濃度を分析すれば、建浴時の何割ニッケルを消費したのか、簡単に知ることが出来ます。ブルーシューマーの建浴時の(硫酸)ニッケル濃度は、25g/Lなので、7.5g/Lになるまで使用し、廃液にしたとすると、(25-7.5)÷25=70%使用したことになります。
次に、連続液のケースを考えます。例えば、SE-666は、建浴時の(硫酸)ニッケル濃度が22.5g/Lに設定されています。
ここに、品物を浸漬し、めっき反応が始まれば、ニッケル濃度は徐々に低下していきます。しかし、実際には、ニッケルや還元剤の濃度、反応に伴いpHが低下し、徐々に速度が低下、最後には反応が停止してしまうので、実際には22.5g/Lのニッケル全てを使用するまでめっきすることは不可能です。そこで、補給液でニッケル、還元剤、pHの低下を補うため苛性ソーダやアンモニアを補給する必要がありますが、途中で補給してしまうと、ブルーシューマーの様に、現在のニッケル濃度からどの程度使用したのか判断することが出来ません。そこで、ターン数という概念を用います。
ここでは、ニッケルに注目しているので、ニッケル塩補給液の補給量から、ターン数を計算します。
SE-666-1の場合、硫酸ニッケルの濃度が、450g/Lなので、22.5÷450=0.05、即ち1Lの浴に対し、50ml補給した時点が1ターンとなります。
同じターン数まで使用できるめっき液でも建浴時のニッケル濃度が異なれば、処理できる表面積は異なります。めっき液が変われば、ターン数=能力ではないことに注意してください。


デシミクロン

鍍着量を体積で表す単位であり、めっきの単価や、補給液の必要量を計算する際に使用します。
1dm2(100cm2)の面積を厚さ1μmでめっきすると1μdm2(μm×dm2)となります。
中高リンタイプのめっき液であれば、硫酸ニッケル1gで2.88μdm2めっきすることが可能です。
弊社では実験値として2.88μdm2を採用していますが、理論値3.14μdm2や3.0μdm2を採用しているメーカーもあるので注意してください。リン含有量が同程度であれば、硫酸ニッケル1gでめっきできる面積は同じです。
また、低リンめっき液やカニボロンなどでは、皮膜中のリン含有量が低くなるので、硫酸ニッケル1gで2.5μdm2(実験値)程度となります。


カジリ(カジリ発生の原因)

品物のエッジ部分などが動物がかじったようなギザギザとした概観となる状態を「カジリ」と呼びます。
何らかの要因でめっき液の組成が崩れ、浴中の安定剤が過剰になった場合にこの現象が発生します。これは浴中に含まれる鉛などの安定剤が品物に一様に吸着せず、エッジ部分など特定の部位に優先的に吸着する性質によるものです。浴比などのめっき条件を適正に調整することにより改善することが可能です。
また、このようなカジリの他に、安定剤の種類によってエッジ部より中心部に白ぼけた様な模様が発生する事もあります。


Ⅴ/A(浴比)

浴負荷(めっき浴に対して投入する品物の表面積または個数)の大小を示す数値です。
V/A=めっき槽の容量V(cm3)÷品物の表面積A(cm2)
の関係が成り立ちます。
一般的なNi-Pめっき液の場合、V/Aを10~20として使用していただくのが最適です。
例えば、10L(10000cm3)のめっき槽があるとすると、処理できる品物の表面積は、500~1000cm2となります。10cm角の試験片なら、両面で200cm2となるので、投入できる個数は、2.5~5枚程度となります。


安定剤

無電解めっき液を構成する必要不可欠な成分の1つで、浴の自己分解(品物表面以外の場所で浴中の金属イオンの還元反応が進行し金属成分が析出する現象)を抑制する目的で添加するものです。一般に、安定剤の濃度が高ければめっき浴は安定しますがめっき皮膜がカジリを生じやすくなり、また濃度が低い場合は反応中にめっき浴が自己分解を起こしザラの発生の一因となりますので、浴中での濃度管理が重要です。弊社製品シューマー液では、液種毎に最適な濃度になるよう設計しております。
従来、一般的に鉛が用いられてきましたが、昨今高まる環境法令規制に対応し、鉛代替の無機物や様々な有機化合物も用いられています。(SE-666、SFB-26 等)